俳句の作り方 雛祭の俳句

ひな祭りについて、石寒太(いしかんた)編著『ハンディ版オールカラー

よくわかる俳句歳時記』より引用します。

「3月3日は人日(じんじつ1月7日)端午(たんご5月5日)

七夕(たなばた7月7日)重陽(ちょうよう9月9日)と並ぶ五節句の一つ。

上巳(じょうし)とも桃の節句ともいいます。

中国では古く、3月上巳の日に、水辺で災厄を祓う(はらう)風習があり、

日本でも曲水の宴として古くから上流階級の人々に取り入れられました。

また、人形で体をなでて、けがれを移して水に流す

日本固有の巳(み)の日の祓いがあります。

これに平安時代の貴族の子女の雛(ひいな)遊びの伝統が結びついて、

次第に女の子の無事成長を祈る祭りとなりました。」

 

昭和を代表する4Tの俳句を紹介します。

4Tは名前がアルファベットのTに由来しています。

橋本多佳子・星野立子・中村汀女・三橋鷹女の4人です。

 

古雛(ふるびいな)をみなの道ぞいつくしき  橋本多佳子

古雛(ふるびな)が春の季語。

また、「いつくしき」であってうつくしきではありません。

上記の同著より引用します。

「『いつくしき』は気品や威厳のある美しさをいいます。」

句意を申し上げます。

時を経たこそにじみ出る、威厳のあるかつ気品をたたえた美しい古い雛。

そんな古い雛は女が生きるべき姿そのものである。

(老いても毅然として生きたいものである・・・筆者)

 

雛飾りつつふと命惜しきかな   星野立子

雛飾るが春の季語。

立子は高浜虚子の次女ですが、

この句を作ったとき、立子は50歳を目前にしていました。

死を意識するほどの年齢ではありませんでした。

けれども、古い雛を見るにつけ、自分の人生を振りかえざるをえませんでした。

そんなとき、地震のように命が惜しいという感情に揺さぶられ襲われたのです。

その気持ちは過去への愛着かもしれません。

生への執着かもしれません。

 

 

手渡しに子の手こぼるる雛あられ  中村汀女

雛あられが春の季語。

大人の大きな手から子供の小さな手に雛あられを渡すと、

小さな手から雛あられがこぼれたこと、こぼれたこと。

汀女は日常生活のこまごまとした情景を素直に詠みました。

その作風は一時「台所俳句」と批判されました。

しかし堂々と反論して、ラジオやテレビを通じ、家庭で働く女性たちに

俳句を広めました。

 

紙雛(かみびいな)さみしきかほを並べけり  三橋鷹女

紙雛が春の季語。

立派な雛段は戦争で焼失したのかもしれません。

紙で雛を作って並べたらなんとお顔の寂しいことでしょう。

鷹女は口語の俳句も作っています。

また、女の情念も俳句に表現しています。

激しい表現のかいま見える句が多いです。

 

 

いかがでしたか?

昭和に活躍した4人の女性。

それぞれに個性が光っていましたね。

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