俳句の作り方 たんぽぽの俳句
たんぽぽや長江濁るとこしなへ 山口青邨(やまぐちせいそん)
たんぽぽが春の季語。
「とこしなへ」はトコシナエと読み、永久の漢字があてられています。
たんぽぽの漢字は蒲公英ですが、この句では漢字を使わずに、
ひらかなを使ってたんぽぽの愛らしさを表現しています。
また、「たんぽぽや」と詠嘆して読者の目をたんぽぽに集中させ、
次に「長江濁る」で濁る大河へと視線を移させています。
たんぽぽや長江濁るとこしなへ
句意を申し上げます。
ああ、たんぽぽが咲いている。
そして、長江は永久に濁りながら流れていくのだなあ!
「たんぽぽ」という小さな情景と「長江」という大きな光景を
対比して取り合わせることによって、
果てしなく長く続く自然界と人間界の営みを際立たせています。
たんぽぽや長江濁るとこしなへ
長江は中国最大の川です。
アマゾン川、ナイル川につぐ世界第3位の長さを誇っています。
水源はチベット高原で、東シナ海へと注いでいます。
下流部は揚子江。
「本来は揚子橋という橋の名前だったが、
西洋人により長江全体の名前として誤用された」(wikipediaより引用)
したがって、山口青邨(やまぐちせいそん)が、
詠んだ場所は上海市なので、正確には揚子江を詠んだ一句です。
山口青邨(やまぐちせいそん)は鉱物学者で、
ベルリン留学の帰途この句を詠みました。
たんぽぽや長江濁るとこしなへ
この句は、山口青邨(やまぐちせいそん)が所属していた俳句誌『ホトトギス』の
巻頭に掲載され、あまたの人を覚醒させました。
彼は海外詠の先駆者だったのです。
また、山口青邨(やまぐちせいそん)は岩手県出身で
「みちのく」の俳句も数多く詠んでいます。
たんぽぽの咲きつづきつつ北の国 山口青邨(やまぐちせいそん)