俳句の作り方 蝶の俳句

天よりもかがやくものは蝶の翅  山口誓子(やまぐちせいし)

「蝶」が春の季語。

「翅」はハネと読みます。

蝶は春夏秋冬、俳句に詠まれますが蝶といえば春の季語です。

夏は夏の蝶や揚羽蝶。

秋冬はそれぞれ秋の蝶、冬の蝶です。

「天よりもかがやくものは」の「は」で軽く強調しています。

「や」とくればしっかり強調します。「や」は切れ字です。

 

 天よりもかがやくものは蝶の翅  山口誓子(やまぐちせいし)

春の天よりもかがやいているのは蝶の翅であることよ!

蝶の翅が、まぶしい春の空よりもかがやいていると詠むことで、

蝶の命も輝きを増します。

この句は蝶の生命賛歌です。

小さな蝶の命をいとおしんでいる山口誓子(やまぐちせいし)の想いが、

十分に表現されています。

 

 山口誓子(やまぐちせいし)は1901年明治34年生まれ。京都市出身。

複雑な家庭環境を少しお話します。

8歳のとき父の女性関係の家庭不和で、母方の祖父母(外祖父母)に預けられ

東京に移転します。

11歳のとき外祖父の居住する樺太に移住。

中学に上がった頃から俳句に目覚める。

12歳のとき、。母を自殺で失う。

16歳で帰郷。

 

 ここで山口誓子(やまぐちせいし)の人となりを表すエピソードを紹介します。

山口誓子(やまぐちせいし)が阿波浄瑠璃を観たときのことです。

人に気づかれないように声をしのばせて泣いたのですが、

抑えきれずに、そばにいた弟子に、嗚咽の声がとどめなく聞こえました。

しかし、浄瑠璃が終わるころ、嗚咽がやみハンカチもしまって

何もなかったような普段通りの山口誓子(やまぐちせいし)の姿がありました。

彼は自分の感情を決して表に出さない人だったのです。

また、自分の都合で決して行動しない人でした。

実妹の葬式に行かなかったのはわけがありました。

俳句講座という先約があったからです。

 このように自分を厳格に律する生き方には、

現代人が忘れている貴いものがあるように思われてしかたありません。

 

 天よりもかがやくものは蝶の翅  山口誓子(やまぐちせいし)

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