俳句の作り方 春服の俳句
春服やポケットの奥に鬱ふれり 伊庭直子いばなおこ
春服シュンプクが春の季語。
この句は2022年令和4年『河』誌に掲載された作品です。
季語春愁で句作に励んでいましたが、なかなか佳い句が生まれません。
気分転換に、よそいきの上着に着替えて外に出ました。
春の晴れた空の下、気分良く散歩しているとふと心に影がよぎりました。
なぜかは分かりません。
ポケットに手を入れると、いっそうその影が濃くなりました。
つまり、鬱に触れたという俳句です。
春愁に通じる句です。
春服やポケットの奥に鬱ふれり
春愁とは「春ゆえの気だるさを伴うそこはかとない愁いや哀しみ」のことです。
(俳句歳時記・春・角川書店編より引用)
皆様はそういうことってありませんか?
なぜかわからないけれと゛、春に心がふさいでしまうことが・・・。
それが春愁です。
春愁は誰にでもあります。
宮崎すみの句集にこんな作品があります。
春愁や人間に影あるかぎり
ここでいう「影」は心をよぎる影です。
物理的な影ではありません。
句意を申し上げます。
人の心に影が差す限り、華やいだ春にこそ感じる哀愁があるのだなあ。
宮崎すみは福岡の俳人。
福岡県知事賞受賞。
また大伴家持の和歌にも春愁が詠まれています。
春の野に霞たなびきうら悲しこの夕影にうぐいす鳴くも
うらうらに照れる春日にひばり上がり心悲しもひとりし思へば
いかがですか?
あなた様も春にこそ感じる哀愁を俳句や和歌に詠んでみませんか?
先日、大阪支部句会で御会いした大谷です。
宜しくお願い致します。