俳句の作り方 桜の俳句
心病む友黒犬に桜散る 伊庭直子いばなおこ
「桜」が春の季語。
この句はネット公募HAIKU日本で2022年令和4年に佳作を獲った作品です。
精神を病んでいる友がいました。
彼女は黒い犬を飼っていました。
その犬に桜が散っているよ。
犬は老いていました。
桜のある公園に行けるほど体力がありません。
「黒犬に桜散る」と詠んだのは想像です。
黒い毛に白い花びらの視覚的効果を狙いました。
また「病む」「黒」「散る」を用いてメランコリックな気分を表現しました。
そして、この句は5・7・5ではなくて7・5・5です。
どうしても5・7・5にはなりえません。
7・5・5で正解です。
この句の前の俳句を紹介します。
心病むひと黒犬飼へば春深し
「春深し」では具体的な映像が見えません。
したがって推敲しまして
心病む友黒犬に桜散る
ほかに、美しく心病むひと春の虹、も作りましたが
観念的だと思い、つまり頭の中だけで考えたような俳句だったので
投句しませんでした。
私の桜の俳句は他にもあります。
桜吹雪白蝶の死の群舞めく
この句は私のお気に入りです。
2022年令和4年、3月の句会で特選を獲りました。
桜吹雪が見えたのでその中に入ってみました。
まるで死んでいく大勢の白い蝶が舞い踊っているよう!
「桜」と「蝶」が季重なりかもしれませんが、あくまで主役は「桜」です。
「蝶」は比喩として使いました。
ところで、句会は鎌田俊氏を中心に月1回開いています。
鎌田氏はHAIKU日本の選者を務めている方です。
句集『山羊の角』を出版しておられます。
『山羊の角』から桜の俳句を紹介します。
千の手のおほかた略し花盛り
「花盛り」が春の季語。
千手観音の手をおおかた省略する。
つまり、2本残っています。人間です。
花見をする人々は観音様のように穏やかです。
いや観音様そのものです。
人々が桜の花に触れたりしながら満開を楽しんでいます。
平和な光景です。
心病む友黒犬に桜散る
桜吹雪白蝶の群舞めく
千の手のおほかた略し花盛り
桜の俳句には人々のさまざまな心が表現されています。