俳句の作り方 夏草の俳句
夏草はさしも伸びけり雨あがる 伊庭直子いばなおこ
夏草が夏の季語。
繁茂する夏草は生命力に満ちています。
夏草はさしも伸びけり雨あがる
この句はネット公募のHAIKU日本で
2019年に佳作を獲った作品です。
夏の草はあんなにも伸びたなあ。
雨があがったよ。
雨が降り続きました。
窓の外をつぶさに観察することもなく幾日も過ぎました。
雨があがって窓外をふと見ました。
すると、驚くほど夏草が伸びていました。
その驚きを俳句に表現しました。
私は今の時代、俳句は「心」を表現するものであると考えています。
高浜虚子や正岡子規の写生句から、時は流れました。
今は人間を描き人の世を詠まねばなりません。
夏草がおどろくほど成長していたというのは人の世の出来事です。
そこには感情があります。
私は感情を分かち合える俳句を目指しています。
さてここで、文法のお勉強を少ししましょう。
副詞「さしも」を品詞分解します。
副詞「さ」+副助詞「し」+係助詞「も」
助動詞「けり」をご説明します。
「それまで気づかずにいたことに初めて気づいた気持ちを表す用法。
その驚きが強いとき詠嘆の意が生じる。」
(学研全訳古語辞典より引用)
夏草はさしも伸びけり雨あがる
夏草の俳句には、松尾芭蕉の有名な作品があります。
夏草や兵共がゆめの跡
なつくさや つわものどもが ゆめのあと
「奥の細道」で芭蕉たちが平泉に寄ったときのこと。
藤原氏の黄金の都は、跡形もありませんでした。
栄耀栄華は夏草に覆われていました。
武士たちの夢の跡には夏草か生い茂っているばかり。
芭蕉はこの世の儚さに泣きました。
夏草や兵共がゆめの跡