俳句の作り方 緑さすの俳句
緑さす薄粥を花のごと余す 小林康治こばやしこうじ
みどりさす うすがゆを はなのごとあます
緑さすが夏の季語。
句意を申し上げます。
青葉の生い茂るそばで、うすい粥をすすったが食べ残してしまいました。
その食べ残しは、まるで桜の花のようでした。
「花のごと」の言い回しが美しい俳句です。
緑さす薄粥を花のごと余す
定型575で数えると・・・。
「緑さす」5「薄粥を花」7「のごと余す」6
意味の切れで考えると・・・。
「緑さす」5「薄粥を」5「花のごと余す」8
意味の切れで考えたほうが分かりやすいですね。
558の破調の句です。
小林康治の略歴をお話しします。
1912年大正元年、渋谷生まれ。
1992年平成4年没。
28歳で『鶴』誌に入会し石田波郷に師事。
31歳の時、応召される。
2年後、傷病兵として帰還。
その後、戦災により一切を失う。
41歳の時『鶴』復刊号に発表した「四季貧窮」48句が注目を浴びる。
「四季貧窮」より・・・。
蜆汁家計荒るるにまかせをり
しじみじる かけいあるるに まかせおり
蜆汁が春の季語。
手の付けられないほどに貧しくなった家。
蜆は当時貝の中でもっとも安かったのです。
蜆汁家計荒るるにまかせをり
氷柱なめて生涯の貧まぬがれず
つららなめて しょうがいのひん まぬがれず
氷柱が冬の季語。
氷柱をなめて水を節約したというのは誇張です。
しかし、そうまで表現したかったのは
将来も貧乏から脱出できそうもない悲嘆が大きかったからです。
氷柱なめて生涯の貧まぬがれず
明け易き沖には未来友等若し
あけやすき おきにはみらい ともらわかし
明け易しが夏の季語。
友人らと夜通し語り合った。
あっという間に夜が明けてしまった。
海の向こうには明るい未来が待っている。
友人たちの若さが一層明るくする。
明け易き沖には未来友等若し
小林康治の句を初めて拝見しました。 飢えにも物理的な飢えと精神的な飢えがありますよね。私も若い頃は貧乏は経験しましたが、精神的な飢えの渇望の方は今でもあります。 その渇望を俳句にする事が出来ればと何時も思います。 なかなか出来ませんが(苦笑) でも、精神的な飢えの渇望を
表現出来る俳人、小説家、詩人、画家等は幸せ者かも知れませんね。
伊庭さんの句はそれが表現されている句があると私は思います。