俳句の作り方 ビールの俳句
ビールほろ苦し女傑となりきれず 桂信子かつらのぶこ
ビールが夏の季語。
「若くして夫を亡くし、一人で働いて生きてきた長い間には
さまざまなことがありました。
みんなと一緒に飲んでたくましさを装ってみても、
心にたまるほろ苦さを消し去ることはできません。」
『よくわかる俳句歳時記 石寒太編著』より引用。
にぎやかに乾杯してごくごく飲んだビール。
当時、女性が男性に交じって豪快にビールを飲むことはまれでした。
桂信子は心の奥底で寂しさを感じています。
その寂しさを「女傑となりきれず」と表現しました。
ビールほろ苦し女傑となりきれず
ところでビールはオランダ語からきています。
江戸時代にも輸入物はありました。
けれども本格的に醸造が始まったのは明治以降です。
洋食の普及とともに急速に広まりました。
ここで他のビールの俳句をご紹介します。
ビール酌む男ごころを灯に曝し 三橋鷹女みつはしたかじょ
ビールくむ おとこごころを ひにさらし
紅一点でビールを飲んでいます。
ある男性が、普段は口にしない腹の底の想いを
この時とばかりぶちまけました。
明かりがこうこうと照っています。
明かりの下でそんな思いを赤裸にさらけだしているのです。
ビール酌む男ごころを灯に曝し
桂信子は1914年大阪市生まれ。
2004年没。
25歳で結婚するも2年後夫を病気で失う。
以降会社員として自活していく。
信子は日野草城の「ミヤコ・ホテル」連作に感銘をうけました。
4年後草城主宰の「旗艦」に投句を始めます。
活発に俳句運動をくりひろげます。
『NHK俳句』の選者、宇多喜代子を育てました。
新興俳句の流れの中で平明で情感のある句を作りました。
ビールほろ苦し女傑となりきれず
ビール汲む男性と女性の思いを表現した句、2句とも感銘受けました。 伊庭さんのブログに出会えなかったら、私はこの句と出会う事が
出来なったと思います。 有難う御座います。
私はお酒は弱く余り飲まないのですが、三橋鷹女のこの句は一人の男性の思いとしてよく分かります。
ただ私は、酒が入ると無口になります。
暗い性格なんでしょうね。