俳句の作り方 水馬の俳句

水馬悲哀の上を滑りけり  伊庭直子いばなおこ

あめんぼう ひあいのうえを すべりけり

アメンボは俳句ではあめんぼと伸ばすことがあります。

ほかにホタルもほたると伸ばすことがあります。

水馬が夏の季語。

 

 この句はネット公募のHAIKU日本で2021年佳作を獲った作品です。

 

 愛犬と死に別れました。

悲しみを抱えながらいつも通っている植物園に行きました。

太陽がさんさんと光り輝いています。

池には花蓮が咲き、あめんぼが水面を滑っています。

 じっと観察しました。

ああ、このアメンボは水の塊でなく悲哀の塊の上を滑っていたのだなあ。

そう気づきました。

愛犬を失った悲しみが、そう気づかせたのです。

水馬悲哀の上を滑りけり

 

 

 滑りけりの「けり」をご説明します。

「それまで気づかずにいた事に初めて気づいた気持ちを表す用法。

その驚きが強いとき詠嘆の意が生じる」

(学研全訳古語辞典より)

 

 ところでアメンボの語源は飴棒です。

飴は臭腺から甘い臭いがするから。

また、棒は体が細長いからです。

アメンボは中脚と後脚が非常に長く発達しています。

毛が水をはじく表面張力によって水面に浮かんでいます。

脚の先端部から油を分泌しています。

肉食です。

 

 

 ここで水馬の有名俳人の句をご紹介します。

あめんぼの吹き溜りにて目覚めけり  夏石番矢なついしばんや

あめんぼの ふきだまりにて めざめけり

あめんぼが目覚めたことに気づくなんて驚きです。

あめんぼはジッとしているとチリアクタのように見えます。

ところがそんな吹き溜りの境涯にも、人間同様ねざめがあるのです。

あめんぼの吹き溜りにて目覚めけり

 夏石番矢は1955年生まれ。

代表句。

未来より滝を吹き割る風来たる

神々のあくびが桜を枯らすのか

俳句の作り方 水馬の俳句” に対して1件のコメントがあります。

  1. 大谷元秀 より:

    私の感じた素直な気持ちを書きます。
    夏石番矢氏の句より、私は伊庭さんの句の方が感動致します。
    「水馬悲哀の上を滑りけり」この句は私は忘れらない句となりそうです。
    けりの説明も的確で、感じ入りました。

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