俳句の作り方 曼珠沙華の俳句

空澄めば飛んで来て咲くよ曼珠沙華  及川貞おいかわてい

そらすめば とんできてさくよ まんじゅしゃげ

曼珠沙華が秋の季語。

 曼珠沙華は葉なし花なしとも呼ばれています。

花が咲いている時季に葉はなく、花が枯れると葉が茂ります。

花は彼岸ごろに咲きます。

彼岸の期間は秋分の日を中日として前後3日間。

この合計7日間が彼岸の期間です。

また、曼珠沙華はサンスクリット語で天界に咲く花という意味です。

 

 

 句意を申し上げます。

空が澄んでいるので、ここに飛んで来て咲いているなあ、曼珠沙華よ。

「飛んで来て咲く」という発想がおもしろいです。

それに、5・7・5が定型で中8は嫌われるのですが、

この句の場合「咲くよ」の「よ」を加えることによって

余韻が生まれ詩情がふくらんでいます。

空澄めば飛んで来て咲くよ曼珠沙華

 

 

 及川貞おいかわていについてお話します。

1899年生まれ、1993年没。

東京生まれ。 女流俳人。

作風は、日常生活に根ざした素直な表現で

飾り気のない分かりやすい言葉遣いが特徴です。

 

 結婚相手の海軍将校に従って軍港都市に転居を繰り返しました。

33歳の時、息子の中学入学のため四谷に仮住まいをします。

その翌年、神田で開かれた俳句会で水原秋櫻子の指導を受けて

俳人としてスタートします。

数々の女流俳人を育て、賞も受賞しました。

 

 

 貞にはこんな句もあります。

梅雨ふかし戦没の子や恋もせで

つゆふかし せんぼつのこや こいもせで

三人の子を失い晩年は夫と二人暮らしでした。

寂しさの中でも俳句活動はやめませんでした。

 句意を申し上げます。

戦死した息子は、若くして恋もしないで逝ってしまった。

梅雨が始まってもうだいぶ長いことだなあ。

梅雨ふかし戦没の子や恋もせで

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