俳句の作り方 草の穂の俳句

草は穂にダムは一気に水吐けり  宇咲冬男うさきふゆお

くさはほに ダムはいっきに みずはけり

「草は穂に」で草の穂が秋の季語。

「カヤツリグサ科やイネ科の雑草は秋に花穂をだし実をつけるものが多い。」

(角川書店編 俳句歳時記 秋より)

 

 

 夏から秋になって草が花穂をつけました。

「草は穂に」で時間経過が表現されています。

一方、ダムは大雨や台風を経験して水をいっぱい湛えました。

ダムにも時間経過を想像させます。

 もうこれ以上貯めておくことができなくなって一気に放水しました。

ドドドドドドドドド。

豪快な放水音が聞こえます。

草が花穂をつける時間は放水するまでの時間と同じなんだなあ。

草は穂にダムは一気に水吐けり

 

 

 宇咲冬男のプロフィール。

1931年生まれ。2013年没。

埼玉県のお寺で誕生。

22歳の時、産経新聞社に入社。

社会部記者時代、無実の人を救うなどしてあまたの賞受賞。

俳句は18歳で始めた。

37歳の時、上田五千石らと「俳句昭和世代の会」を結成し

本格的に俳句活動を始める。

また連句の普及に尽力し、NHK教育テレビに2度出演。

それから海外詠にも力を入れた。

 

 

 宇咲冬男のほかの俳句を紹介します。

こおろぎひとつ胸の裂け目に降りて鳴きぬ

こおろぎひとつ むねのさけめに おりてなきぬ

こおろぎが秋の季語。

 記者時代の作品です。

入社以来、文化部勤務を希望してきた作者。

ところが待てど暮らせどそんな辞令はおりません。

長い地方記者生活にも飽きてきた。

そんなとき、コオロギの声が聞こえて空虚な思いにかられたのでした。

「胸の裂け目」という表現には作者の悲痛な気持ちが投影されています。

こおろぎひとつ胸の裂け目に降りて鳴きぬ

俳句の作り方 草の穂の俳句” に対して1件のコメントがあります。

  1. 大谷元秀 より:

    また一人、伊庭さんのブログによって俳人を知りました。
    感謝致します。
    あくまで私の私見ですが、「こおろぎひとつ胸の裂け目に降りて鳴きぬ」の句は胸に響きましたが、
    「草は穂にダムは一気に水吐けり」の句は平明な句の気がして、あまり胸には響きませんでした。
    偉そうに言って申し訳ありません。

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