俳句の作り方 秋茜の俳句
荒れ寺に名も美しや秋茜 伊庭直子いばなおこ
秋茜アキアカネが秋の季語。秋茜はトンボ科アカネ属に分類されるトンボの一種。
俗に赤とんぼと呼ばれる。
田んぼなどでヤゴから羽化した秋茜は、夏の高温を避けて高地へ長距離移動し成熟する。
秋に平地に戻り繁殖する。
しっぽはオスが鮮やかな赤、メスは黄褐色。
荒れ寺に名も美しや秋茜
この句は2020年ネット公募のHAIKU日本で秀逸を獲った作品です。
この句ができるまでのいきさつをお話ししましょう。
作句のため歳時記を読んでいました。
蜻蛉とんぼの項目に秋茜という季語に出会いました。
なんて美しい響きの季語なんだろうと心を動かされました。
ぜひ秋茜を使って一句をものしたい。
そう思いました。
かつて電車に乗ってある植物園に行った時の事です。
秋茜がスーイと池の辺りを飛んでいました。
その様子を思い浮かべて作句にとりかかりました。
でも、秋茜を植物園で飛ばしても面白味がありません。
第一、詩情に欠けます。
さて、どこに飛ばそうか?
当初は、瑠璃堂の名も美しや秋茜としていましたが
「荒れ寺」におちつきました。
荒れ寺に名も美しや秋茜
秀逸に選ばれましたので、選者鎌田俊氏の句評が掲載されました。
ご紹介します。
「秋の空にひと際鮮やかなのが『秋茜』。
澄んだ空気の中を美しく飛び回ります。
その場所が『荒れ寺』となると侘しさが漂い、ことさらに元気な赤が印象的です。
どこまでも澄み渡る空を四つ角のある如くに動く『秋茜』の姿が目に浮かびます。
秋茜の群れというよりは、
秋の寂寥感に包まれた景色の中に捉えた赤い一点と思われる深い情趣の一句です。
荒れ寺に名も美しや秋茜
素晴しい句ですねぇ。
荒れ寺と秋茜の対比が特に素晴らしいです。
生意気なようですが、鎌田氏の句評は必要ないと思いました。