俳句の作り方 立春の俳句
立春の血潮ばしやつと顔濡らし 伊庭直子いばなおこ
りっしゅんの ちしおばしゃっと かおぬらし
この句は2022年4月号の『河』に掲載されました。
立春が春の季語。
2024年の立春は2月4日。
「寒気の中に春の兆しが感じられる。
寒明かんあけ(2月4日)が厳しい季節の余韻の中で
ほっとした気分を言うのに対し、
立春は、新しい豊かな季節への思いが強い。」
(俳句歳時記 春 角川書店編)
句意を申し上げます。
二十四節気の一つである立春を擬人化した句です。
風を感じたくて戸外に出ました。
まだ冷たい立春の風が顔を打ちます。
その風はまるで血潮の様。
血潮は容赦なく私の顔を濡らします。
風を血潮として捉えました。
どうして血潮に例えたのか?
それは、立春にめくるめく躍動を感じたからです。
まだ寒いけれどこれからは花や草の芽が膨らみます。
本格的な春への期待感。
心躍る気持ちが立春にはあります。
やはり、風を擬人化すれば血潮になります。
立春の血潮ばしやつと顔濡らし
立春を用いた俳句3句をご紹介します。
立春の夜を馳すバスは光の函 高澤良一たかざわりょういち
りっしゅんの よをはすバスは ひかりのはこ
立春の夜を疾走するバスはまるで光の函のようです。
煌々と車内を照らしている灯り。
その灯りが一瞬にして駆け抜けた。
明るいバスを光の函に例えたところが秀逸です。
立春の夜を馳すバスは光の函
縁談の成る出はいりや春立ちて 及川貞おいかわてい
えんだんの なるではいりや はるたちて
黒紋付の男女が、縁談が成立した家を出入りしています。
縁談が成立してめでたい。
しかも今日は立春。
旧暦で言えば新年です。
めでたさもひとしおです。
縁談の成る出はいりや春立ちて
春立つと拭ふ地球儀みづいろに 山口青邨やまぐちせいそん
あ、今日は立春だった。
埃をかぶった地球儀を布で綺麗に拭いてみよう。
すると地球儀にみずみずしい水色が現れたではありませんか。
春立つと拭ふ地球儀みづいろに
あくまで私の私見ですが、伊庭さんの句には良い句だなぁ、と感じ入りましたが、他の人の句には、正直何故この句が良いのか、私には分かりません。 私に句に対する見識や知識が足りないのかも知れませんが、どうしても感じ入る事が出来ません。
敢えて言うなら、 春立つと拭ふ地球儀みづいろに には少し思うところがありましたが。
傲慢と怒られるかも知れませんが、私の正直な感想です。