俳句の作り方 新年の俳句
宝恵駕籠の槍重々し天狗面 伊庭直子(いばなおこ)
「宝恵駕籠」はホエカゴと読みます。
この俳句は、ネット公募の「HAIKU日本」で2019年佳作を獲った作品です。
応募するにあたり、何を詠もうか悩んだ末、地元大阪の行事を調べることにしました。
すると、十日えびすがヒットし、さらに調べると宝恵駕籠の行列が
大阪ミナミの街をねり歩くことが判りました。
ここに句材があるに違いないと直感し、さっそく動画を視聴しました。
芸こ・芸能人・福娘が駕籠に乗って愛嬌をふりまいています。
そこで、①宝恵駕籠の芸能人も乗りにけり
②撮りし後烏帽子娘や初笑ひ
③宝恵駕籠の槍重々し天狗面
以上3句を作りました。
そして、②と③をU-CAN生涯学習局、俳句入門講座、第5回に提出しました。
提出できるのは3句で他に1句も出しました。
返送された指導書は添削なしの総合評価「優」でした。
これに気をよくして提出した3句を「HAIKU日本」に投句したのです。
結果は佳作でした。
ここからが重要です。
③宝恵駕籠の槍重々し天狗面。これの講評を紹介します。
「大阪今宮神社の十日戎の景。中七『槍おも重し』『重重し』と
うまく形容詞の『し』の切字でまとめました。」
第5回の課題は、中七に切字「し」とか「や」を使って作ることでしたので
そこのところを苦心しました。
指導書が返送されて思ったことは、
「重々し」ではなく「重重し」のほうが良かったということです。
また、②撮りし後烏帽子娘や初笑ひ。これは総評からの抜粋を引用します。
「『初笑ひ』が烏帽子娘に掛かるか、作者の『初笑ひ』とみるか
解釈が分かれる。」とありました。
つまり、どういうことかと申しますと、②の講評欄には
「金の烏帽子をかぶった巫女。カメラやスマホを向けられると営業スマイル。
撮られた後はツンと澄まし顔。それに初笑いした作者。
この『初笑ひ』をどう解釈するか」
私が意図したのは、撮られている最中は緊張して澄まし顔。
撮影直後は緊張が解けて「初笑ひ」でした。
一句に二通りの「初笑ひ」が存在していたのです。
読み手にさまざま想像させる俳句が良い句だと信じています。
言い換えると余白のある俳句です。
切字については追い追いご説明させていただきます。
乞うご期待!