俳句の作り方 薄氷の俳句

薄氷を踏みて夢世に行く人よ  伊庭直子(いばなおこ)

薄氷はハクヒョウではなく「うすらい」と読みます。

初春の季語です。

ネット歳時記の『きごさい歳時記』より引用します。

「春浅いころの薄く張った氷のこと。または解け残った薄い氷のこともいう。

冬の氷と違い、消えやすいことから、淡くはかない印象がある。」

 

 

薄氷を踏みて夢世に行く人よ  伊庭直子(いばなおこ)

この私の句は2021年4月号の俳句雑誌『河』に掲載されました。

淡く儚い氷を踏んで、はかない世の中に行く人よ!

夢世というのは儚いこの世です。

この句の意味を申し上げます。

厳密に言えば、うすらいを踏む前は夢の中です。

うすらいを踏んだ感触で我に返り現実にもどったわけです。

その現実というのは儚いこの世だったのです。

 

 

元の句は「薄氷を踏みて行く人夢世に生く」でした。

うすらいを踏んで行く人は、儚いこの世に生きているという意味です。

似たような二つの句ですが元の句には欠点があります。

それは「踏みて」「行く」「生く」と3つもの動詞が含まれていることです。

俳句では、動詞は2つまでという暗黙のルールがあります。

このルールに従うと、3つの動詞のうち1つは諦めなければいけません。

さて、どれを削ろうか・・・。

「行く」か「生く」のどちらかになります。「踏む」は外せませんからね。

私はあいまいな「生く」を捨てました。

「生く」を捨ててスッキリとした俳句になりました。

うすらいは儚い氷なので、はかなさと響きあう「夢世」と取り合わせて、

統一された雰囲気の俳句として成功しました。

 

 

俳句では取り合わせという手法があります。

上記の句のように響きあうことばを用いたり、

異質の、いわば少々違和感のある言葉をぶつけるように組み合わせる方法があります。

例えば、致死量の遊びせんとや犬ふぐり  三木冬子

犬ふぐりを摘んで遊ぶのは普通です。俳句にしても面白みがありません。

ところが、「致死量の遊び」と詠んだことで、俄然、個性が光ります。

「遊び」に「致死量」という異質な言葉をぶつけたのです。

 

 

さて、ここでおさらいをしましょう。

①一つの俳句に動詞は2つまで

②取り合わせという手法がある

同質の響きあう二つの語を使う方法と、異質のぶつかり合う語を使う方法

 

 

さあ、皆様、どんどん俳句を作りましょう!

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