俳句の作り方 アイスコーヒーの俳句
アイスコーヒー鷹女を読めばほの寂し 伊庭直子いばなおこ
アイスコーヒー たかじょをよめば ほのさびし
この句はネット公募のHAIKU日本で、2021年秀逸を獲った作品です。
アイスコーヒーが夏の季語。
アイスコーヒーを飲みながら三橋鷹女を詠みました。
鷹女は独特な句を作っています。
たとえば・・・。
鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし
しゅうせんは こぐべし あいはうばうべし
鞦韆というのはブランコの事です。
ブランコは漕ぐ以外なにものでもありません。
愛というものも奪う以外なにものでもない。
そう鷹女は言い切るのです。
キリストの説く隣人を愛せよ、であるとか
他人の夫(妻)を盗るな、といった愛情論に
真っ向勝負を挑んでいます。
そして勝負に勝っている。
それゆえ私は寂しさを感じるのです。
さてここでHAIKU日本の選者、鎌田俊氏の評をご紹介します。
「三橋鷹女は、中村汀女・星野立子・橋本多佳子ともに、
゛4T゛と呼ばれた大正から昭和にかけての女流俳人。
『一句を書くことは一片の鱗の剥離である』と凄まじい思いを語り
『鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし』は代表句。
異才の俳人の句集を読みながら、ほっと息をつきたくなる心理が
上七の『アイスコーヒー』で上手く表現されています。
『ほの寂し』という作者の心情にも共感を覚えます。」
アイスコーヒー鷹女を読めばほの寂し
話かわって三橋鷹女の経歴をお話しします。
1899年千葉県出身。
1972年没。
江戸時代後期の歌人と姻戚関係にある三橋家は、
代々和歌をたしなんでいました。
「鷹女は、色紙や短冊や扇面などが、はり並べられた屏風を
眺めながら育ちました。」(Wikipediaより)
次兄の影響で作歌をはじめ
結婚相手に俳句の手ほどきを受けます。
写生ではなく奔放な口語表現を得意としました。
新興俳句の旗手として女性の情念を詠みました。
当時としては前衛的な句風だったのです。
鞦韆は漕ぐべし愛は奪ふべし
アイスコーヒー鷹女を読めばほの寂し
伊庭さんの「アイスコーヒー鷹女を読めばほの寂し」素晴らしい俳句ですねえ。
僕に言わせれば、三橋鷹女の句をある意味、凌駕していると思います。
生意気言って済みません。