俳句の作り方 薄氷の俳句
拈華微笑薄氷を踏む音かすか 伊庭直子いばなおこ
ねんげみしょう うすらいを ふむおとかすか
薄氷うすらいが春の季語。
この句は2021年ネット公募のHAIKU日本で秀逸を獲りました。
拈華微笑ねんげみしょうを解説します。
仏教用語です。
禅宗の説法で用いられました。
釈迦がある山で華はなを拈ひねりました。
多くの弟子たちはその意味を理解できませんでした。
ただ摩訶迦葉まかかしょうだけは理解してにっこり微笑みました。
このように言葉を使わないで心から心へ伝えることを言います。
平たく言えば以心伝心です。
実作するにあたって筆者が体験した出来事をお話しします。
気候の良い時期はウォーキングに励んでいます。
いつも出会うこれもまたウォーキングしている男性がいます。
彼は右足が不自由でした。
私たちはすれ違いざま、顔を見合わせました。
私は微笑みました。
「がんばっているよ。あなたも頑張ってね。」
お互いにそう思いました。
言葉を発することはなかったのですがお互いの気持ちは同じでした。
それを拈華微笑と表現しました。
おりから道は薄氷が張っています。
その薄氷を踏むかすかな音のように心を通わせあったのでした。
拈華微笑薄氷を踏む音かすか
薄氷うすらいについて・・・。
「春先、池や川の岸辺、水たまりに張る氷は、薄く儚くつい触れてみたくなります。
薄氷は古典和歌においては、季節感を持たなかったり冬のものとして詠まれていましたが
次第に春の季感を付されるようになりました。
薄氷を春の季題として初めて俳句に詠んだのは高浜虚子です。
『薄氷の草を離れる汀かな』」
(俳句歳時記 石寒太編著 ナツメ社)
拈華微笑薄氷を踏む音かすか
粘華微笑と云う仏教用語は知識としては知っていましたが、それを使って薄氷を踏むに転化して行く力量は見事としか言葉がありません。
私もこうゆう一行詩を作ってみたいです。 多分私には無理だと思います。
伊庭さんに聞きたいのですが、その高浜虚子の「薄氷の草を離れる汀かな」は素晴らしい俳句なんですかねぇ。
私の知識力が無いせいか私には分かりません。
私も随分前ですが、薄氷を踏むや命の重さあり と云う俳句を河に出した事があります。