俳句の作り方 菫の俳句

 いくたびも都は滅びすみれ咲く  吉田汀史よしだていし

いくたびも みやこはほろび すみれさく

すみれが春の季語。

すみれについて・・・。

「東アジアの温帯にひろく分布し

日本では日当たりの良い山野に多種類が自生する。

花は濃い紫。

4月から5月に咲く。」

(俳句歳時記 春 角川書店編)

 

 

 京都は7たびも戦場になりました。

以下列挙します。

 

 1156年 保元の乱ほうげんのらん

朝廷が天皇方と上皇方に分かれ衝突に至った政変。

天皇方の勝利。

 1160年 平治の乱へいじのらん

上皇の近臣間の争い。

初の源平合戦。

 1180年 治承・寿永の乱じしょう・じゅえいのらん

6年に渡って京都をはじめ奥州以外の日本各地での戦乱。

源平合戦で平家惨敗。

 1221年 承久の乱じょうきゅうのらん

日本史上初めての朝廷と武家政権の全面対決。

京都をはじめ各所で戦。

朝廷の敗北。

 1467年から11年間 応仁の乱おうにんのらん

将軍の後継者争いと室町幕府の重鎮による権力闘争。

戦国時代へ突入した。

 1868年 鳥羽・伏見の戦いとば・ふしみのたたかい

新政府軍と旧幕府軍の内戦の戊辰戦争ぼしんせんそうの初戦。

新政府軍の勝利。

 1945年 京都空襲

太平洋戦争中、米軍によって6ヶ月余り5度にわたって行われた無差別爆撃。

 

 

 京都は7たび滅びましたが、すみれは毎春咲きました。

人の営みの虚しさ。

自然の大きさ。

それらを対比して無常の中に、すみれという存在に希望を見出している作者。

いくたびも都は滅びすみれ咲く

俳句の作り方 菫の俳句” に対して2件のコメントがあります。

  1. 大谷元秀 より:

    何時も感じる事ですが、伊庭さんの掲句に対する説明には感心致します。
    丁寧で理解しやすく、それでいて簡潔にまとめられています。私はそのような能力が欠けていますので、羨ましく思います。
    歴史を振り返っても、人類の争いが途絶えた事はありません。
    民族紛争、宗教戦争、経済戦争と枚挙に遑がありません。悲しく愚かな事だとは思いますが、ある意味人類の救い要の無い
    本質かも知れませんね。
    すみれが羨ましく思います。

  2. 森 住義 より:

    いくたびも都は滅びすみれ咲く

     こういう俳句を作りたかったと思う作品ですね。作りたかったが私にはとうてい表現できなかった。いい句ですね。

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