俳句の作り方 薔薇の俳句

 大輪の薔薇剪り何か失へり  野見山のみやまひふみ

たいりんの ばらきりなにか うしなえり

薔薇が夏の季語。

 

 中国から渡来した薔薇が「そうび」と呼ばれました。

日本の在来種はいばらです。

 初めて日本文学に登場したのは『古今集』の紀貫之の和歌です。

「我はけさうひにぞ見つる花の色をあだなるものといふべかりけり」

うひは初めての意。

「けさうひに」にさうひという名詞を隠した物名歌ぶつめいか。

さうひ はさうび、そうび。

 歌意を申し上げます。

今朝初めて見たそうびの色は、儚く美しいと言うべきであったよ。

 

 

 大輪の薔薇剪り何か失へり

大輪の薔薇を剪って何かを失ったことですよ。

 

 丹精込めて咲かせたあまたの薔薇。

その中でもひときわ見事な大輪の薔薇。

さあ、剪ってお部屋に飾りましょう。

チョキン。

生々しい茎の切り口が見えます。

大きな薔薇の花がなくなったあとには大きな穴があいたのです。

寂しさがよぎります。

 どうして寂しいのでしょうか?

それはこの大輪の薔薇の世話をもうする必要がなくなったからです。

それに、今まで世話にかけてきた膨大な時間に比べて

チョキンと剪ったのはほんの数秒です。

剪らなきゃ良かった。

後悔の雲が胸をおおいます。

さっきまであんなにルンルンだったのに・・・。

 寂しさと後悔を抱いてこの大輪の薔薇を手に家に戻ります。

花瓶に活けてみると立派に咲き誇っています。

でも何か空しい気持ちは否めないのです。

大輪の薔薇剪り何か失へり

 

 

 野見山ひふみについて・・・。

1924年生まれ。福岡県出身。

高浜虚子に師事する。

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