俳句の作り方 鰯雲の俳句

     鰯雲人に告ぐべきことならず  加藤楸邨かとうしゅうそん

    いわしぐも ひとにつぐべきことならず

     鰯雲が秋の季語。

    2024年の立秋は8月7日です。

    今日は暦の上ではもう秋です。

     鰯雲について・・・。

    「巻積雲または高積雲で、さざ波に似た小さな雲片の集まりが空一面に広がる。

    鰯の群れのように見えるから、

    あるいはこの雲が出ると鰯が大漁になるというのでその名がついた。」

    「俳句歳時記 秋 角川書店編」

 

 

     句意を申し上げます。

    鰯雲が美しい。

    人に伝えるべきことがあるのにできない。苦しい。

 

 

     この句の生まれた背景には日中戦争があります。

    日中戦争について簡単に解説します。

    1930年代初頭より日本は中国への侵略を開始しました。

    1937年(昭和12年)盧溝橋事件ろこうきょうじけんがきっかけで、

    全面戦争になり中国の徹底抗戦で戦争は長期化します。

    しかし、太平洋戦争がはじまると後退を余儀なくされます。

    8年後の1945年(昭和20年)ポツダム宣言受諾により日本が負けます。

 

 

     そんな戦争のさなかに詠まれた俳句です。

    言論統制・思想弾圧が厳しく軍国主義がますます激しさを増していきました。

    《この戦争はまちがっている》

    そんなことをつぶやこうものならただちに捕らえられ監獄に収容されます。

    当時は何か言いたくても何も言えない状況だったのです。

    楸邨は苦悶しました。

     鰯雲人に告ぐべきことならず

 

 

     加藤楸邨かとうしゅうそんについて・・・。

    1905年生まれ 1993年没。

    「『馬酔木』の叙情的な作風に飽き足らず、

    人間の生活や自己の内面に深く根ざした作風を追求」した。

    (Wikipediaより)

    鰯雲人に告ぐべきことならず

    

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です