俳句の作り方 虫の俳句

     地の底の静けさ畏れ虫なけり  伊庭直子いばなおこ

    ちのそこの しずけさおそれ むしなけり

     この句は2019年ネット公募のHAIKU日本で佳作を獲りました。

 

 

     虫が秋の季語。

    「鈴虫、松虫、コオロギなど秋に鳴く虫の総称。

    鳴くのは雄で、その音色は種類により多彩です。

    それぞれに風情があり、美しく寂し気に鳴く虫は、

    日本人の『もののあわれ』に根差した伝統的な俳句の主題です。

    秋の寂しさと同時に命のいとしさやはかなさを感じさせ、しみじみとした情趣を醸し出します。」

    (よくわかる俳句歳時記 石寒太編著)

 

 

     句意を申し上げます。

    地底の静寂に畏怖の念を抱いて虫が鳴くのです。

 

 

     日本人は地の底に「根の国」と「黄泉」があると信じていました。

    8世紀初期に成立した古事記や日本書紀に詳しい記述があります。

    根の国も黄泉も神話の異界のことで神々が登場します。

     当時も秋の虫が鳴いていました。

    いいえ太古より秋の虫は存在し、美しい声を辺りに響かせていました。

    そうです、彼らは異界の静寂に耳をすませていたのです。

    余りにも静かな根の国や黄泉に畏れおののいて鳴いているのです。

     地の底の静けさ畏れ虫なけり  伊庭直子いばなおこ

    

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