俳句の作り方 つづれさせの俳句

     メモ紙のたつきつましやつづれさせ  伊庭直子いばなおこ

    めもがみの たつきつましや つづれさせ

     この句は2023年のネット公募のHAIKU日本で秀逸を獲りました。

     つづれさせが秋の季語。

    つづれさせはコオロギ科でりーりーりーりりりりりと美しく鳴く。

 

 

     選者鎌田俊氏の評をご紹介します。

    「『つづれさせ』はつづれさせこおろぎのこと。

    りーりーりーと鳴く声を昔の人は『肩刺せ、裾刺せ、つづれ刺せ』と聞いて

    着物の綻びを縫い直せと教えているのだと言います。

    『たつき』とは生計のこと。

    『メモ紙』もチラシなどを使っていると思わせてくれます。

    冬に向かっていく秋の寂し気な情趣を詠んだ一句で、

    つつましやかな暮らしぶりがかいま見えます。」

 

 

     ネット公募HAIKU日本に投句するにあたり、何を詠もうかと思案しました。

    すると机の上に適当な大きさに切ったメモ紙の束が目に入りました。

    そうだ、地味で質素な生活を詠もうと思い立ちました。

    生活は古語でたつき。

    メモ紙のたつきつましや  まですんなり詠めました。

    後は下五に季語を配置せねばなりません。

    折から虫の声がしています。

    俳句歳時記をひもときました。

    候補として虫の秋・虫時雨があがりました。

    しかし、つましい生活とは無関係です。

    上五や中七とも響きあっていません。

    こおろぎの項目につづれさせがありました。

    これだ!

    服を新調することなく、今ある衣服の綻びを直せというつづれさせ。

    つづれさせがぴったり。

    メモ紙のたつきつましやつづれさせ

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