俳句の作り方 こぼれ萩の俳句
老いの句はゆめゆめ詠まぬこぼれ萩 伊庭直子いばなおこ
おいのくは ゆめゆめよまぬ こぼれはぎ
この句は2020年『河』誌の11月号に掲載されました。
こぼれ萩が秋の季語。
萩について・・・。
「秋の七草のひとつでマメ科ハギ属の落葉低木または多年草。
代表的な種は宮城野萩。
山野に自生し庭園にもよく植えられる。
自生種も多く古来秋を代表する花だったので、
草冠に秋と書いて『はぎ』と読ませた。」
(俳句歳時記 秋 角川書店編)
句意を申し上げます。
やれ年を取ったという俳句は決して詠みません。
このこぼれ萩のように散っても、そう、老いても美しくありたいものです。
『河』誌を読むと、やれ膝が痛いの腰がどうのという句が目につきました。
そんな句を読んで笑って済ませる人もいるかもしれません。
でも私はそうではありません。
他人の体の不調はおかしくありません。
私は自身の体の不調を詠んだ句は諧謔かいぎゃくとは思えないのです。
(諧謔とは俳句で言うおかしみです。)
俳句として認めがたい。
わざわざ、膝や腰の痛みを俳句にしても意味がないように思います。
なぜなら詩情がないからです。
日常会話でも、自分の体の不調を言いたくありません。
ましてや作句となればなおさらです。
高齢になっても体の不調を作句することは避けたいものです。
老いの句はゆめゆめ詠まぬこぼれ萩
松尾芭蕉の諧謔味あふれた俳句をご紹介します。
蚤虱馬の尿する枕元
のみしらみ うまのしとする まくらもと
寝ようと思ってものみやしらみが跳ねている。
おまけに馬が排尿する音が聞こえてきた。
あら何ともなや昨日は過ぎて河豚汁
あらなんともなや きのうはすぎて ふぐとじる
あら、何ともなかった。
河豚汁を食べて昨日無事に過ぎたのサ。
以上2句がおかしみのある俳句です。
私もどちらかと言うと、身体の不調等を詠った句は好きな方ではありませんが、でも、老いそのものを詠う事は有りだと思います。
その句に諧謔味が無くとも、美が無くとも一本の句として老いを謳い上げた句は出来るのではないかと思っています。