俳句の作り方 蜩の俳句
かなかなと鳴きまた人を悲します 倉田糸へんに広い文くらたこうぶん
かなかなとなき またひとを かなします
かなかな(蜩ひぐらし)が秋の季語。
「蝉の中でも最も美しい鳴き声といわれているひぐらしは、
晩夏から初秋にかけてカナカナカナと哀調のある澄んだ声で鳴きます。」
(よくわかる俳句歳時記 石寒太編著)
「森や林から聞こえてくる声には儚さと共に透明感があり秋にふさわしい。」
(俳句歳時記 秋 角川書店編)
句意を申し上げます。
カナカナカナと鳴くひぐらしは、悲しみにひたっていた私(作者)をまた悲しませることだ。
ああ、切ないなあ。
こういう句を鑑賞するにはその人の悲しみを想像するに限ります。
作者が感じていた悲しみとはどんなものだったのでしょうか?
筆者はこれと言ったハッキリした悲しみではないような気がします。
つまり、悲しい出来事があったわけではないと思うのです。
それではどんな哀しみでしょうか?
それは漠然とした現代人が感じる哀しみ。
憂いです。
たんなるメランコリーではなく孤独も作者は感じているのです。
かなかなと鳴きまた人を悲します
かなかなはしばしば俳句で「悲し」という措辞とともに登場します。
インターネットでその鳴き声を聞いてみてください。
ご自分が独りぼっちであることを再確認するでしょう。
かなかなと鳴きまた人を悲します
倉田こうぶんについて・・・。
1940年生まれ。 2014年没。
大分県出身。
父が俳人だったので幼いころより俳句に親しむ。
平明でありつつ詩情あふれた写生句が特徴。