俳句の作り方  マントの俳句

     ひと憎むこころをつつむ黒マント  文挟夫佐恵 ふばさみふさえ

    ひとにくむ こころをつつむ くろマント

 

 

     マントが冬の季語。

    「ケープの付いた釣り鐘型で袖のない、ゆったりした外套。

    日本では着物の上に着るものとして普及し、かつては旧制高校の生徒も愛用した。

    女性用や子供用もある。」

    (俳句歳時記 冬 角川書店編)

    インバネスともいいます。

    インバネスはスコットランドの地名です。

 

 

     句意を申し上げます。

    人を憎む心は誰でも持っています。

    でも、彼、彼女はそれを隠しています。

    まるで黒マントが憎しみを隠しているようです・・・。

    ひと憎むこころをつつむ黒マント

 

 

     鑑賞してみましょう。

    マントの色が黒というところにこの句のミソがあります。

    黒は神秘的でエレガントなイメージがあります。

    でも、人間になりすました悪魔が黒マントを着用しているかもしれません。

    善意を持った人間としてあなたに近づくのです。

    あなたは悪魔の見せかけの善意を受け入れ堕落していくのです。

     また、憎しみは偽装されて人々の間に蔓延していきます。

    そのような偽装の役割を果たしているのが黒マントなのです。

     マントは明治時代(1868年から1912年)に流行しました。

    文挟夫佐恵ふばさみふさえは1914年生まれですから懐古して詠んだ俳句ということになります。

     ひと憎むこころをつつむ黒マント

    

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