俳句の作り方 布団の俳句
佐渡ヶ島ほどに布団を離しけり 櫂未知子かいみちこ
さどがしまほどに ふとんを はなしけり
布団が冬の季語。
「蒲団はもともと座禅の時に敷いて座る蒲がまの葉を編んだ円座のこと」
(俳句歳時記 冬 角川書店編)
句意を申し上げます。
男が私(作者)の布団と男自身の布団を敷きました。
でも私は自分の布団をうんと離したことですよ。
そう、本州と佐渡ヶ島の距離ほどに。
佐渡ヶ島ほどに布団を離しけり
掲句を掘り下げてみましょう。
腐れ縁で男と同じ部屋に寝ている私(作者)。
別れたいけれど諸々めんどうが起こりそうでそうもできない。
今夜も男が床を並べている。
ああ、嫌だいやだ。
どうしてこんなにぴったりと布団を近づけるのかしら。
エイッ、布団を畳の縦の長さほど離してやった。
ああ、きのうもおとといもその前も同じことをしている。
別れなければ・・・。
でも気づかないのかしら。
私の気持ちが冷めてしまったことに。
いや気づいてる。
執着しかない。
だからこうして毎晩ウチにやってきて布団を密着して敷くのだわ。
もう私たちダメになっているのになんて未練がましいんでしょう。
佐渡ヶ島ほどに布団を離しけり
男女の関係性を俳句で表現できるのは櫂未知子だけです。