俳句の作り方 凍蝶の俳句

     凍蝶を過のごと瓶に飼ふ  飯島晴子いいじまはるこ

    いてちょうを あやまちのごと びんにかう

 

 

     凍蝶が冬の季語。

    「ほとんどの蝶は春から秋に発生し卵や蛹さなぎで越冬するが

    タテハチョウなど成虫のまま越年するものがある。

    寒さで凍えたようにじっとしているものを凍蝶という。」

    (俳句歳時記 冬 角川書店編)

 

 

     凍蝶を過のごと瓶に飼ふ

    掲句の凍蝶は、タテハチョウでなく一般の蝶だと思われます。

     句意を申し上げます。

    私(作者)は寒さで凍えてじっとしている蝶を捕まえました。

    その蝶を室内の瓶の中で飼っています。

    そんな行為は間違っています。

    自然にまかせて越冬させるべきなのです。

    もしかしたら戸外の寒さで死ぬかもしれません。

    でも、室内の瓶の中で飼うことはまちがっています。

    なぜなら私はもうすぐ死ぬ蝶の「死」を操作しているからです。

    だから過ちなのです。

    凍蝶を過のごと瓶に飼ふ

 

     どうしてそんなことをしているのか私自身にもはっきり分かりません。

    蝶に対する憐みでしょうか?

    その憐みは、大自然のなかの一つの生命として生ききるのを妨げています。

    ほんとうにどうしてこんなことをしているのか分からないのです。

     凍蝶を過のごと瓶に飼ふ

 

     私には凍蝶に、いや「自然」と「生命」に対して人間のおごりがあるのかもしれません。

    凍蝶は寒さで凍え死にする運命を、堂々と受け容れていたはずです。

    その矜持を私は無残にもむしり取ったのです。

    ああ、どうして凍蝶を瓶の中で飼うなどという無謀なことをしているのでしょう。

     凍蝶を過ちのごと瓶に飼ふ

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