俳句の作り方  枯芝の俳句

     枯芝に柩の夫を連れ還る 横山房子よこやまふさこ

    かれしばに ひつぎのつまを つれかえる

    (俳句や和歌の夫はつまと読みます)

 

 

     枯芝が冬の季語。

    「冬が深まるとほとんどの草木は枯れ、野山も庭も寂しさが漂う。」

    (よくわかる俳句歳時記 石寒太編著)

 

 

     句意を申し上げます。

    私(作者)の夫が死にました。

    今柩の中に安置されています。

    私は死に顔を見つめています。

    ついきのう、二人で家の枯芝を眺めながら

    春が来たら何を植えようかと話し合っていたのです。

    その夫が亡くなりました。

    急なことで夫の死を受け入れることができません。

    私は柩の中の死に顔を見つめています。

 

     枯芝を見渡しながら二人で会話したことを、何度も繰り返し思い出しています。

    ああ、棺の中の夫を生き返らせて家の芝生に連れ帰りたい。

    それが出来ないので昨日の出来事を反芻しているのです。

    そうすることで亡き夫を柩から出しているのです。

    また、死神にからみとられた肉体と魂を想い出の枯芝に連れっているのです。

    私は柩の中の死に顔を見つめています。

     枯芝に柩の夫を連れ還る

 

 

     掲句の下五の連れ還るですが、帰るではなくて還るです。

    なぜ作者は還るの字を選んだのでしょう?

    それは死神に対する抵抗であり奪です。

    だから連れ還るのです。

     枯芝に柩の夫を連れ還る

    

    

 

      

    

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