俳句の作り方  陽炎かげろう の俳句

     陽炎より手が出て握り飯摑む  高野ムツオ

    かげろうより てがでて にぎりめしつかむ

 

 

     陽炎が春の季語。

     「日差しが強く風の弱い日に、遠くのものがゆらゆら揺らいで見える現象。」

    (俳句歳時記 春 角川書店編)

    陽炎より手が出て握り飯摑む

 

 

     句意を申し上げます。

    握り飯をつかんだ手は陽炎のせいなんかで揺らぎませんでしたよ。

    陽炎より手が出て握り飯摑む

 

 

     鑑賞してみましょう。

    18音の破調の句です。

    陽炎より6音、手が出て4音、握り飯摑む8音

     さて、どうして作者は握り飯をつかんだ手を

    陽炎から出たと表現したのでしょう?

    それは握り飯をつかんだ手がハッキリ見えたからにほかなりません。

    もとより陽炎は遠くのものが揺らいで見えます。

    けれども作者は、真っ白な握り飯をつかむところを両眼で揺らぎなく目撃したのです。

    なんだ、そんなつまらないことをわざわざ俳句にしたのか、と貴方は感じるかもしれません。

    しかし作者は2011年3月11日、東日本大震災のとき宮城にいたのです。

    その時の俳句なのです。

    倒壊した建物や電柱、その他もろもろの人工物が地震によって破壊されつくしました。

    作者は少なからずショックを受けました。

    数日後、握り飯を配る光景を見ていました。

    そして、握り飯をつかむ手もじっと観察したのです。

    ショックを受けて見た遠景は揺らいで見えていました。

    まためまいがしてあたりの様子は揺れていました。

    しかし復興の兆しの握り飯を見たとき、もう揺らいではいませんでした。

    その手は陽炎から出た手だったのです。

     陽炎より手が出て握り飯摑む

 

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