俳句の作り方 蔦の芽つたのめの俳句
蔦の芽やいらへなきベル押しつづけ 渋沢渋亭しぶさわしぶてい
つたのめや いらえなきベル おしつづけ
蔦の芽が春の季語。
「春、蔦は赤や白の芽を出し、しだいに青くなる。
壁などに一面にはわせた蔦が芽吹くのは美しい光景である。
青蔦(夏)蔦(秋)」
(俳句歳時記 春 角川書店編)
蔦の芽やいらへなきベル押しつづけ
句意を申し上げます。
ああ、蔦の芽が伸びている。
私は返事のないベルを押し続けているよ。
蔦の芽やいらへなきベル押しつづけ
鑑賞してみましょう。
掲句は想像力をかけ巡らせる力があります。
1 なぜ返事がないのでしょうか。
居留守なのかそれともほかに重要なことがあって返事ができないのでしょうか。
2 返事がないのに何故作者はベルを押し続けているのでしょうか。
火急の用事があっての訪問なのでしょうか。
この二つの疑問を解決すべく読者は想像をたくましくします。
筆者はこの洋館の主は女性であると考えました。
作者は彼女から手紙を受け取りました。
「あなた様がこの手紙を読んでいる時、わたしはこの世にいません。
今まで愛してくださってありがとう。
でも愛は他の人に移ってしまい、わたしは生きる意味をなくしてしまいました。
死にます。 ごめんなさい」
「なんてことを・・・!」
怒りにも似た気持ちがわきあがる渋沢渋亭。
とるものもとりあえず彼女の住む家に向かいます。
息を弾ませながらベルを押しますが返事がありません。
それでもベルを押し続けます。
「出てくれっ!」
蔦の芽も沈黙しています。
蔦の芽やいらへなきベル押しつづけ