俳句の作り方 勿忘草わすれなぐさ の俳句
血を喀けば勿忘草の瑠璃かすむ 古賀まり子
ちをはけば わすれなぐさの るりかすむ
勿忘草が春の季語。
「晩春、瑠璃色の可憐な花を総状につける。」
(俳句歳時記 春 角川書店編)
血を喀けば勿忘草の瑠璃かすむ
句意を申し上げます。
結核を患って血を喀きました。
ああ、勿忘草の瑠璃色がかすむ!
血を喀けば勿忘草の瑠璃かすむ
鑑賞してみましょう。
あんなに私(作者古賀まり子)を愛してくれた恋人は
私か結核にかかり喀血するようになると勿忘草の瑠璃色がかすむように離れていってしまいました。
彼は衛生上離れていったのでしょうか?
それとも私の事がうとましくなったのでしょうか?
考えれば考えるほど悩ましい限り。
血を喀けば勿忘草の瑠璃かすむ
掲句の勿忘草は失恋を物語っています。
つまり同じ瑠璃色の花でも朝顔やネモフィラ竜胆りんどうでは作者の訴えたいことが伝わらないのです。
ここはまさしく勿忘草でなければなりません。
勿忘草は中世ドイツの悲恋伝説に由来しています。
騎士ルドルフはドナウ川の岸辺に咲くこの花を、恋人ベルタのために摘んでいました。
水辺近くには花の群れが咲いていて、もっと摘もうと岸を降りましたが足を滑らせてしまいました。
水中に沈んだルドルフは最期の力を振り絞って花を岸に投げ「僕の事を忘れないで!」と叫びました。
ベルタは彼の墓にその花を供えました。
いつか人はその花を彼の最期のことば「忘れないで」と名付けるようになりました。