俳句の作り方  梅雨の俳句

     ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき  桂信子かつらのぶこ

    ふところに ちぶさあるうさ つゆながき

 

 

     梅雨が夏の季語。

    「前略ー梅の実が熟す頃なので梅雨ばいう。

    黴かびの発生しやすい時期なので黴雨ばいうという。」

    (俳句歳時記 夏 角川書店編)

     ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき

 

 

     句意を申し上げます。

    懐の乳房が憂鬱。

    ああ、梅雨が長いなぁ。

     ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき

 

 

     鑑賞してみましょう。

    女性の象徴である乳房があると、どうして私(作者)が憂鬱なのがお分かりですか?

    順を追ってご説明します。

     私(作者)は26歳で夫を亡くし、以後独身を貫きました。

    生活のため働きどおしで、淡々と仕事をこなしていました。

    大正3年生まれで26歳の時は昭和15年。

    当時のキャリアウーマンはごく少数でした。

    職場はセクシャルハラスメントが横行していました。

    女性の地位が低くとにかく生きづらい。

    でも働くしかありません。

     そんな生活に潤いをもたらしてくれたのが俳句作りです。

    日野草城ひのそうじょうのエロティシズムに憧れて俳句を始めました。

    ですから私の句には官能の雰囲気があります。

     けれども私の俳句を見下す男がいたのです!

    「草城の二番煎じだ。だから女流はダメなんだ」

    悔しい。

    もちろん毅然として反論し抗議しました。

    そのやり取りで精力を使い果たしてしまいました。

    疲れた・・・。

    残ったのは倦怠感と憂鬱。

    梅雨がいっそう憂鬱を強めたのです。

     ふところに乳房ある憂さ梅雨ながき

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