俳句の作り方  青梅雨あおつゆ の俳句

     今月19日PCの不具合が生じました。

    インターネットの画面が右に寄ってしまったのです。

    すぐには富士通の訪問サポートが受けられず、やきもきしました。

    けれども1週間後の26日、技術者が来てあっという間に元に戻りました。

    マイクロソフトのエッジを入れ替えたとお聞きしました。

    Ⅰさんには感謝しかありません。

    そしてブログの再開を待っていただいた皆様方にも感謝を捧げます。

 

 

 

     青梅雨の深みにはまる思ひかな  石川桂郎

    あおつゆの ふかみにはまる おもいかな

 

 

     青梅雨が夏の季語。

    「前略ー梅の実が熟す頃なので梅雨ばいう、黴の発生しやすい時期なので黴雨ばいう という。」

    (俳句歳時記 夏 角川書店編)

    青梅雨の深みにはまる思ひかな

 

 

     句意を申し上げます。

    (草木の生い茂る緑を打つ梅雨の雨。それを青梅雨といいます。)

    緑を打つ雨の音が耳にこびりついて離れない。

    それに青梅雨が長い。

    そんな青梅雨にどっぷりはまってしまった私の思いであることよ。

 

 

     鑑賞してみましょう。

    「思ひ」は憂鬱だけではありません。

    たしかに雨の音は憂さを誘います。

    けれども私(作者)は憂鬱の他にある感情を持っているのです。

 

 

     話は5年前にさかのぼります。

    それは青梅雨の季節でした。

    私は小雨の中を傘をささずに近所の定食屋に向かいました。

    ひととおり腹を満たして気が付くと外は本降り。

    店のオヤジに傘を借りられるか尋ねましたが、あいにく客用のものはないとのこと。

    仕方がないので勘定を済ませて店の軒下に立ちました。

    そこへ長い黒髪の若い女が傘をさしかけたのです。

    私はハッとなりました。

    愁いをおびた美しい横顔に見とれていると、女は家まで送りますと言うのです。

    ふと見ると女の左側の首に切り傷のあとがあります。

    それに傘の柄を持つ左手の甲には、火の付いたたばこを押し付けられた痕もありました。

    私は急に女に対する興味がわいてきました。

    それで女の親切を受けることにしました。

    二人は無言のまま5分ほどで玄関につきました。

    すると女は唐突に「一晩泊めてください。」と言うのです。

    私は驚きながらも丁寧に断って中に入りました。

    しかし靴を脱ぐとすぐ後悔しました。

    玄関脇の小窓を開けると彼女の後姿が見えました。

 

 

      青梅雨の季節になると、あの女はどうなったのだろうかと5年前の出来事を思い出すのです。

    青梅雨の深みにはまる思ひかな

 

 

     

     俳句の作り方  青梅雨あおつゆ の俳句” に対して1件のコメントがあります。

  1. 大谷元秀 より:

    伊庭さんの5年前の想い出、まるでドラマの1シーンですよね。
    その短い出来事に含まれたシークエンスから、さまざまなドラマが喚起されます。
    私は石川佳郎の俳句よりその出来事の方に魅かれました。

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