俳句の作り方 旱ひでり の俳句
浦上は愛渇くごと地の旱 下村ひろし しもむらひろし
うらかみは あいかわくごと ちのひでり
旱が夏の季語。
「雨の降らない日が続き水が涸れること。
田畑の作物が枯れ始め、都市部の水不足も深刻な問題となる。
見渡す限り万物が乾ききった景色は殺伐とした思いを抱かせる。」
(俳句歳時記 夏 角川書店編)
浦上は愛渇くごと地の旱
浦上は愛渇くごと地の旱
句意を申し上げます。
長崎のカトリック浦上天主堂近辺は、愛が渇いてそれを欲するように地面が干からびている。
鑑賞してみましょう。
8月9日は長崎原爆の日です。
1945年広島に続いて長崎に原爆が投下されました。
爆心地は今の平和公園です。
浦上天主堂は一部の壁を残して崩壊しました。
下村ひろしは長崎出身の医師であり俳人です。
凄惨な光景を目撃して心は傷つき奥底に沈殿した反核の思いが掲句を作らせました。
「愛」とは神つまりイエスキリストの愛です。
作者はクリスチャンではありませんが、信者であってもやはり「愛渇くごと」と詠んだでしょう。
それほど神も仏もないような地獄絵図だったのです。
作者の気持ちになって掲句を鑑賞しましょう。
天主堂のあたりは恐ろしい焦土だ。
この地獄に一滴の水、一しずくの愛が欲しい。
ああ、大地は乾ききって殺伐としている。
浦上は愛渇くごと地の旱