俳句の作り方 月光の俳句
月光の指より漏れ出づる悩み 櫂未知子かいみちこ
げっこうの ゆびよりもれいずる なやみ
月光が秋の季語。
「月は四季それぞれの趣があるが、 そのさやけさは秋に極まるので単に月といえば秋の月を指す。
月はいわゆる雪月花の一つで古来多くの詩歌に詠まれ、物語の背景を支えてきた。」
(俳句歳時記 秋 角川書店編)
月光の指より漏れ出づる悩み
月光の指より漏れ出づる悩み
句意を申し上げます。
月に掌をかざすと指の間から月光が漏れる。
その漏れた月光は私の悩みそのものであることよ。
鑑賞してみましょう。
さてどんな悩みなのでしょう。
作者の気持ちになって何度も読んでみましょう。
私(櫂未知子)は悩んでいます。
俳句を作るうえでの悩みです。
私は当初口語の句を詠んでいました。
例えば・・・。
春は曙そろそろ帰ってくれないか
調子よく男女の性愛を表現していたのですが、男性と別れてしまいまして、
とんと俳句が作れなくなりました。
どうすればいいのだろう?
それで文語体に徹することに決めたのです。
でも文語体で何を詠めばよいのか分かりません。
悩みは尽きずいっそのことその悩みを表現することにしました。
やはり美しい詩情あふれる句にしたい。
月光が雲の間から漏れ出るように私の悩みも雲の間から漏れ出る。
いやいや、それでは句作に苦心していることが読者に伝わらない。
句づくりは指を使う。
そうだ!指の間から漏れ出る悩みはどうだろう。
月光の指より漏れ出づる悩み