俳句の作り方     秋風の俳句

     秋風や殺すに足らぬ人ひとり    西島麦南にしじまばくなん

    あきかぜや ころすにたらぬ ひとひとり

 

 

     秋風が秋の季語。

    「秋の訪れを告げる秋の初風から晩秋の蕭条しょうじょうとした風まで、

    秋の風にはしみじみとした趣がある。

    金風・素風は陰陽五行説で、秋は五行の金に当たり、色は白を配することからきた語。

    色なき風は華やかな色がない風の意で、漢語の素風を歌語にしたもの。

    爽籟そうらいは爽やかな風音の事。」

     (俳句歳時記 秋 角川書店編)

     秋風や殺すにたらぬ人ひとり

 

 

     秋風や殺すにたらぬ人ひとり

    句意を申し上げます。

    ああ、秋風が吹いてしみじみとする。

    そして殺すに足らぬ人間が一人居る。

 

 

     鑑賞してみましょう。

    作者西島麦南は武者小路実篤に共鳴して「新しき村」に参加し、

    3年ほど農耕に従事した経験があります。

    「新しき村」は争いのないユートピアを構築することを目標にしています。

     筆者は「新しき村」の村人になろうとした動機を考えてみました。

    殺したいほど憎い人物がいて、汚れた自分の心をなんとかしたかったのではないでしょうか?

    心の闇を照らしかったのではないでしょうか?

    村人になって鍬を握り畑を耕すうち、自らの憎しみを俯瞰できるようになり、

    殺すには足らぬという心境に至ったのだと筆者は考えます。

     秋風や殺すにたらぬ人ひとり

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