俳句の作り方 実南天の俳句
億年のなかの今生実南天 森澄雄もりすみお
おくねんの なかのこんじょう みなんてん
実南天が秋の季語。
「南天はメギ科の常緑低木で、晩秋から冬にかけて茎の先に6、7ミリの球形の赤い実が熟す。
白い実の物もある。
雪が降るころになっても実ったままのため、雪兎の眼玉にして遊んだりする。」
(俳句歳時記 秋 角川書店編)
億年のなかの今生実南天
句意を申し上げます。
何億年という時間の中に、今この世に生きている人生がある。
ああ、実南天の赤が鮮やかで美しい。
鑑賞してみましょう。
私(作者)は第二次世界大戦の北ボルネオで「死の行軍」を経験しました。
自決や病死した部下の墓標に俳句を添えて葬りました。
それが隊長の務めだったのです。
日本に帰ってからは数々の病魔に襲われ、車いすでの移動を余儀なくされました。
また、ほとんどの時間は病床に伏せる毎日でした。
しかし、私はくじけませんでした。
生きる意味を俳句に見出したのです。
生とは何か?死とはなにか?
俳句で解決しようと日夜俳句を作り続けました。
俳句は生死を共にした兵士たちへのいわば追悼でもあったのです。
人間、それは精神と肉体を併せ持つ生物ですが、465億光年の宇宙の中の1点にすぎません。
また、人生も永遠に流れる時間の中の1点に過ぎないのです。
億年のなかの今生実南天
