俳句の作り方     冬菫ふゆすみれの俳句

     仮の世のほかにこの世のなし冬菫    倉橋羊村くらはしようそん

    かりのよの ほかにこのよのなし ふゆすみれ

 

 

     冬菫が冬の季語。

    「冬に咲いている菫のこと。

    菫は春の花だが、日当たりのよい野山では冬の半ばから咲き始めるものもある。

    けなげに咲く花は心を和ませる。」

     (俳句歳時記 冬 角川書店編)

     仮の世のほかにこの世のなし冬菫

 

 

     仮の世のほかにこの世のなし冬菫

 

 

     句意を申し上げます。

    この世は仮の世である。

    その仮の世のほかに、自分の生きる世界はないのだという風に冬菫が咲いているよ。

 

 

     鑑賞してみましょう。

    パッと読んだ時は冬菫の憐れさが伝わってきます。

    仮の世でしか生きられない冬菫の哀れ。

     しかし、熟読すれば冬菫のいじらしいほどの逞しさを理解することができます。

    小指の爪ほどの小さな薄紫の花は、冬の日差しを浴びて精いっぱい生きています。

    冬菫はすべての命あるものを象徴して、作者の目に留まりました。

     「ああ、こんな街中で咲いている。

    電柱の根元や縁石に沿って・・・。

    たくましくも愛らしいなあ。

    この花はまるで自分のように思える。

    私も仮の世でしか生きられない。

    私にあの世へ続く道はない。

    この冬菫と同じだ。

    そう思うと冬菫が愛しくてならない。

    冬菫は生命のシンボルだ。

     仮の世のほかにこの世のなし冬菫

 

 

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