俳句の作り方     初昔はつむかし の俳句

     こころの火落して睡る初昔    鈴木鷹夫すずきたかお

    こころのひ おとしてねむる はつむかし

 

 

     初昔が新年の季語。

    「昨年の事。一瞬にして旧年となった一年を振り返って言う。

    初昔は新年になってから振り返る旧年の事。」

     (俳句歳時記 新年 角川書店編)

     こころの火落して睡る初昔

 

 

     こころの火落して睡る初昔

 

 

     句意を申し上げます。

    イ 「睡る」が「初昔」にかかると解釈した場合。

    熱情を抑制したまるで眠ったような去年だったなあ。

    ロ 「睡る」で切れると解釈した場合。

    情熱・緊張・期待・不安を振り落としてぐっすり眠った。ああ、旧年。

     筆者はイの立場です。

    眠るのは作者でなくて初昔(旧年)という時間。

    つまり擬人化です。

    こころの火が落ちた状態にある初昔が眠っている。

    そんな感じです。

 

 

     鑑賞してみましょう。

    私(作者)の去年は振り返ってみると情熱とは程遠い、まるで時間が眠ったような一年だった。

    でもそれも良しとしている。

    なぜなら頑張るだけが人生ではないと思うから。

    エネルギー満タンもいいけれど、力を抜いて静けさに身をゆだねるほうが性に合っている。

     61歳のとき『門』と言う俳誌を創刊した。

    巻頭に掲げたのが

    白刃の中ゆく涼気一誌持つ

    厳しい批判の嵐を覚悟して気概を込めて作った俳句のように思われているけれど、

    これだって静寂の中に身を置いてボンヤリ机の前に座っていたら浮かんだ5・7・5だ。

     それからこういう句もある。

    春耕の人がゆつくり女なり

    耕す人がゆっくり立ち上がり女だと気づいた句。

    この句を鑑賞していただければ、いかに私が内なる熱と縁遠く、

    時間が眠っているのではないかと思えるほど魂が脱力しているかがお分かりいただけると思う。

     こころの火落して睡る初昔

    

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