俳句の作り方     咳せきの俳句

     咳をして死のかうばしさわが身より    山上樹実雄やまがみきみお

    せきをして しのこうばしさ わがみより

 

 

     咳が冬の季語。

    「しはぶきシワブキともいう。

    喉や気管の粘膜が刺激されたときにおこる激しい呼気運動。

    冬は乾燥や風邪の炎症などによって、咳が出ることが多い。」

     (俳句歳時記 冬 角川書店編)

     咳をして死のかうばしさわが身より

 

 

     咳をして死のかうばしさわが身より

 

 

     句意を申し上げます。

    咳をすると「死」のかぐわしい良い香りが私の体からすることよ。

 

 

     鑑賞してみましょう。

    ある日の咳をきっかけに私(作者)はこの句を作りました。

    咳というささやかな動作の奥にふっと死の気配が立ち上るのを感じたのです。

    それは恐れではなくどこか香ばしい香りのようでした。

 

     長く生きていると、身体に痛みや重みを抱えることが多く、咳ひとつでその影が現れます。

    死は外から突然訪れるものではなく、わが身の内側から立ち昇るものだと私は思うのです。

    死の気配を「かうばしい」と表現したのは、苦しみの先にある安らぎを感じたからです。

 

     咳の一瞬に生と死の境がわずかに揺らぎました。

    その揺らぎを私は静かに受け入れたかった。

    この句はその時の呼吸のようなものです。

     咳をして死のかうばしさわが身より

     

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