俳句の作り方     白梅の俳句

     白梅や父に未完の日暮れあり    櫂未知子かいみちこ

    はくばいや ちちにみかんの ひぐれあり

 

 

     白梅が春の季語。

    「春先に開花し馥郁ふくいく たる香気を放つ。

    中国原産で、日本へは8世紀ごろには渡って来ていたとみられる。

    『万葉集』には119首もの歌が収められて、花と言えば桜より梅であった。

    水戸市の偕楽園や奈良県の月ヶ瀬などは梅の名所。

    梅と言えば白梅の事である。

    まだ寒さの残る中できっぱり咲く様子をとらえたい。」

     (俳句歳時記 春 角川書店編)

     白梅や父に未完の日暮れあり

 

 

     白梅や父に未完の日暮れあり

 

 

     句意を申し上げます。

    ああ、真っ白な梅が咲いた。

    父にはまだ終わっていない日暮れがある。

 

 

     私がまだ実家で生活していたころ、白梅が咲いた朝、父は庭に出て俳句手帳を開くのが習慣でした。

    枝を見上げ少し首をかしげて白梅を見つめる父。

    「さて、どう詠もうか」とつぶやく声が静かな庭に響きます。

    私はすぐ後ろで白梅と父の背中をかわるがわる見ていました。

     父には夕方になるとボンヤリ空を眺める時期がありました。

    俳句手帳を開いたまましばらく動かないこともあったのです。

    私には何を父が思っているのか分かりませんでした。

     久しぶりに実家に帰ると、父が句を読んでくれました。

    声は落ち着いていて少し明るい。

    読み終えると軽くうなずき私の顔を見ました。

    父は亡くなりましたが、白梅の季節になるとあの時の父の声を思い出します。

     白梅や父に未完の日暮れあり

     

    

 

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