俳句の作り方     春愁の俳句

     髪おほければ春愁の深きかな    三橋鷹女みつはしたかじょ

    かみおおければ しゅんしゅうの ふかきかな

 

 

     春愁が春の季語。

    「春ゆえの気だるさを伴うそこはかとない愁いや哀しみのこと。

    春愁うと動詞化するのは望ましくない。」

     (俳句歳時記 春 角川書店編)

     髪おほければ春愁の深きかな

 

 

     髪おほければ春愁の深きかな

 

 

     句意を申し上げます。

    髪が多いので、春の気だるい愁いが深いことだなあ。

    おほければ・・・おほけりの已然形+ば

    ~ので(順接確定条件)

 

 

     鑑賞してみましょう。

    春の光を浴びて鏡に向かうと、私は髪の重さをはっきり感じます。

    それは漂うような気配の類ではありません。

    重い髪の毛は、胸の奥に沈んでいるものを確かな形にします。

    季節の明るさの中でくっきりと映し出された影に似ています。

     髪の重さは、私の中に沈むものをそのまま映しています。

    ほどいても束ねても沈むものの輪郭が消えないのです。

    春の風は柔らかいのに胸の底に沈んでいくものがあります。

    これはボンヤリした気分ではなく心の澱おり なのです。

     その澱おり をもう手放すことも変えることもできません。

    私は春の明るさに見放されてしまったのです。

    重苦しい髪をそのまま受け入れています。

    私は静かに諦めの底にとどまっています。

     髪おほければ春愁の深きかな

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