俳句の作り方     水澄む の俳句

     水澄むや死にゆくものに開く扉    藤田直子ふじたなおこ

    みずすむや しにいくものに ひらくとびら

 

 

     水澄むが秋の季語。

    「秋はものみな澄み渡る季節であり、水もまた美しく澄む。

    水底まで見えるような湖沼や川の美しさを言う。

    水たまりや汲み置きの水には使わない。

    (俳句歳時記 秋 角川書店編)

     水澄むや死にゆくものに開く扉

 

 

     水澄むや死にゆくものに開く扉

    句意を申し上げます。

    ああ、水が澄んで美しい。

    死んでいく人には開く扉がある。

 

 

     鑑賞してみましょう。

    作者の藤田直子の気持ちになって読んでみましょう。

    愛する彼が癌で死んでいきます。

    余命あとわずかです。

    あまりに悲しいので湖畔にやってきました。

    この湖はなんて美しいのでしょう!

    水底まで透けて見えるのです。

     死んでいく人にはきっと向こうの死後の世界へ通じる扉があるに違いありません。

    この湖の水同様清らかな世界が・・・。

    そして、死ぬと同時に扉が開くのです。

     まだあの人は生きています。

    ですから扉は閉まっています。

    けれども近いうちに扉が開き、彼が入り扉が閉まる。

    私(作者)は涙をぬぐって見送ってやります。

    その時、私は亡骸を涙で汚さぬよう、ハンカチを握りしめているでしょう。

     ああ、あの人のもとへ帰らねばなりません。

    湖よ、さようなら・・・。

     水澄むや死にゆくものに開く扉

    

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