俳句の作り方 天の川の俳句
いくたびも手紙は読まれ天の川 中西夕紀なかにしゆき
いくたびも てがみはよまれ あまのがわ
天の川が秋の季語。
「澄み渡った夜空に帯のように白々とかかる無数の恒星の集まり。
北半球では1年中見られるが、秋が最も明るく美しい。
七夕伝説と結びついて、万葉のころから詩歌に数多く詠まれてきた。
俳諧以降は、天の川自体の美しさを詠むことが多い。」
(俳句歳時記 秋 角川書店編)
いくたびも手紙は読まれ天の川
いくたびも手紙は読まれ天の川
句意を申し上げます。
何度も何度も繰り返し、その手紙は読まれ続けています。
ああ、天の川が美しい。
鑑賞してみましょう。
掲句の手紙は誰が書いたものなのでしょう?
80年前兵士が戦地から妻に宛てた手紙ではないかと、筆者は想像しました。
その兵士は戦死して手紙が遺品として残り、遺族が何度も何度も読んでいるのです。
曾祖父から祖父へそして父へ、作者へと受け継がれた手紙。
作者はどんな気持ちで、代々受け継がれてきた手紙を読んだのでしょう。
作者の気持ちになって読んでみましょう。
妻(曾祖母)は妊娠していました。
自分は明日にも知れぬ命だというのに妻の体を気遣う夫(曾祖父)。
「俺はもう帰れない。
明日、神風特攻隊員として飛び立つ。
身体を大切に。
お腹の子を無事に育ててくれ。」
私(作者)は、初めてその遺書を読んだとき涙がこぼれそうになりました。
命の大切さ、そして平和のありがたさが身に沁みました。
彼がこの遺書を書いたとき、頭上には天の川がきらめいていたに違いありません。
いくたびも手紙は読まれ天の川