俳句の作り方 銀河の俳句
眠るたび父は銀河に近づきぬ 櫂未知子かいみちこ
ねむるたび ちちはぎんがに ちかずきぬ
銀河が秋の季語。
「天空を横切る天の川は無数の恒星からなる銀河で、銀漢・星河などとも呼ばれます。
北半球では1年中見られますがなかでも秋が美しいようです。
天の川の美しさを七夕と切り離して詠みだしたのは俳諧になってからです。」
(よくわかる俳句歳時記 石寒太編著)
眠るたび父は銀河に近づきぬ
眠るたび父は銀河に近づきぬ
句意を申し上げます。
父が眠るたびにその魂は銀河に近ずいたのです。
鑑賞してみましょう。
私(作者)の父の命はもう永くありません。
ここ1ヶ月でだんだん起きている時間が短くなりました。
それに言葉が不明瞭で、私はただただうなずくしかありません。
1日のうちで眠りに落ちる回数も増えました。
ああ、死が近い。
それはまるで父の魂が私のそばから離れていくようです。
それに父がどこか遠くの人のように思われるのです。
なぜって、深い皺やゆるんだ口元には、私が幼かった頃の面影がみじんもないのです。
死期が近くなって、たまらなくなって外に出ました。
あ、天の川!
父の魂はきっと銀河の一つの星となるのでしょう。
眠るたび父は銀河に近づきぬ