俳句の作り方     春の曙の俳句

     春は曙そろそろ帰ってくれないか    櫂未知子かいみちこ

    はるはあけぼの そろそろかえって くれないか

 

 

     春の曙が春の季語。

    「春の夜明、東の空がほのぼのと白みかける時分。

    『春の曙』は【枕草子】冒頭の章句『春は曙。やうやうしろくなりゆく山際、

    少しあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる』の趣として定着した。」

     (俳句歳時記 春 角川書店編)

     春は曙そろそろ帰ってくれないか

 

 

     春は曙そろそろ帰ってくれないか

 

 

     句意を申し上げます。

    春は曙のころ合いが美しい。

    情事の後の男よ、夜が明けた。

    そろそろ帰ってくれないか?

 

 

     鑑賞してみましょう。

    春の朝はどうしてこうもしらじらしいのでしょう。

    昨夜の情事の余韻が体の奥に残っているというのに・・・。

    男は妙に落ち着いて居座り、帰る気配を見せないのです。

    ああ、私は本音が言えません。

     掲句はむろん春に向けたのではなく、相手に向けた言葉です。

    けれども、私ははっきり言えるほど器用でも強くもありません。

    表白できない本音は心の中に残ったままです。

    だからこそ曙の光が何か憎たらしいのです。

     私は男に甘えられません。

    それに帰ってほしいのに、それも言えないのです。

    情事の後の複雑な気持ちを全部自分の中で処理するしかありません。

    掲句は本音を抱えたままのやりきれない独白です。

     春は曙そろそろ帰ってくれないか

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