俳句の作り方 犬ふぐりの俳句
瓦礫みな人間のもの犬ふぐり 高野ムツオたかのむつお
がれきみな にんげんのもの いぬふぐり
犬ふぐりが春の季語。
「イヌフグリは早春、道端や野原に這うように広がって群生する。
瑠璃色の花を咲かせる。
在来種のイヌフグリはほとんど見られない。
普通ヨーロッパ原産のオオイヌノフグリを指す。」
(俳句歳時記 春 角川書店編)
瓦礫みな人間のもの犬ふぐり
作者は2011年3月11日、東日本大震災の折り被災しました。
人工物である建物は倒壊し瓦礫となりました。
その光景を目の当たりにした作者の心情は想像に余りあります。
しかし俳人の目は瓦礫のそばの犬ふぐりを発見します。
瑠璃色の小さな花が、春の息吹と共に咲いていたのです!
喜びが胸に湧きあがります。
いっぽう、生きるとはどういうことか?
人間はもう一度考え直せとの自然からのメッセージだと考えます。
人間の技わざはもろい。
自然は、地震はもとより強大な力があるのです。
瓦礫みな人間のもの犬ふぐり
高野ムツオは東日本大震災後次のように述べています。
「阪神淡路大震災後、阪神地区の俳人たちは心に残る俳句を作っていた。
やはり、その時に表現した言葉の強さというものが感じられました。
ですからこの大震災(東日本大震災)では、まず自分も俳句を作ろうと考えました。
もう一つは何のために俳句を作るのかということをつきつめました。
以前から生きていく中で俳句とはいったいどんな力になるのだろうという思いがあり
つまり俳句は誰かに何かを伝えるためではなく
自分自身が表現することでその言葉から自分が力を得ることができる、
それが俳句ではないかという思いです。」
またこうも述べています。
「瞬間を切り取るのが俳句という信念です。」
瓦礫みな人間のもの犬ふぐり
高野ムツオについて・・・。
1947年宮城県生まれ。
小学生の頃より父に連れられて句会や吟行に参加。
震災詠を多く含む『萬の翅』を上梓。
瓦礫みな人間のもの犬ふぐり