俳句の作り方 立夏の俳句

 おそるべき君等の乳房夏来る  西東三鬼さいとうさんき

おそるべき きみらのちぶさ なつきたる

夏来るが夏の季語。

2024年の立夏は5月5日。

 

 

 この句は終戦後まもなく詠まれました。

戦時中、女性は和服をつぶしてモンペをはいていました。

戦後、パーマネント全盛となり服装も自由になりました。

水を得た魚のように女たちはお洒落に邁進しました。

 

 

 作者は通勤電車に揺られています。

そこで見たものは、薄いブラウスに乳房の形もあらわな女性の姿でした。

迫りくるような胸・胸・胸。

初老の西東三鬼にとって眩しさを越えておそるべきものだったのです。

ああ、夏がやってきた。

そんな感慨を抱いたのでした。

作者は戦後に明るい未来を期待していたのです。

そして立夏は作者にとって新しい時代を象徴する日だったのです。

おそろしき君等の乳房夏来る

 

 

 西東三鬼の他の有名俳句をご紹介します。

岩に爪たてて空蝉泥まみれ

いわにつめたてて うつせみ どろまみれ

空蝉が夏の季語。

 

 

 空蝉について解説します。

現しおみが、うつそみとなり、うつせみと音変化しました。

現しおみは、今この世に生きている人(転じて現世)を意味します。

つまりこの句の空蝉は作者自身です。

岩に爪を立てて必死にしがみついている蝉の抜け殻。

それは現世に人の眼も気にせずしがみついている作者の姿です。

労働の辛苦、闘病で疲弊した精神などを泥まみれの空蝉に例えたのです。

岩に爪たてて空蝉泥まみれ

 

 

 西東三鬼について・・・。

1900年(明治33年)生まれ。

1962年(昭和33年)没。

伝統俳句から距離を置いた新興俳句運動の中心人物の一人。

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