俳句の作り方 青嵐の俳句

 青嵐葉擦れ迫りて我棒に  伊庭直子いばなおこ

あおあらし はずれせまりて われぼうに

 この句は2021年9月号の『河』に掲載されました。

 青嵐が夏の季語。

「青葉の頃に吹き渡るやや強い南風。

『セイラン』と音読すると『晴嵐』と紛らわしいので

『あおあらし』と読む習わしになっている。」

(俳句歳時記 夏 角川書店編)

 

 

 病院の近くにある、緑茂る林を歩いていました。

折から強い風が吹きました。

大木の下にいた私は葉擦れの音を聞いています。

大きな長い葉擦れの音です。

だんだん不安になり一歩も動けなくなりました。

まるで自分が棒のようになったことですよ。

 

 

 皆様はシューベルトの『魔王』という歌曲をご存知でしょうか?

ピアノの連打で始まるその曲は、不安を掻き立てます。

病身の息子と彼を腕の中に抱えて馬に乗った父と魔王の歌で構成されています。

シューベルト18歳の作品です。

ゲーテの同名の詩に触発されてあっという間に書き上げました。

 

 息子は魔王に優しく誘惑されますが拒みます。

すると魔王は荒々しく息子の体を掴みます。

息子は魔王に掴まれたと父に訴えます。

父は恐怖に駆られて馬を疾走させます。

しかし、館に到着した時には息子は死んでいたという物語です。

 

 とにかく不安になる歌曲です。

 

 

 青嵐で葉擦れの音がおこり、徐々にその音が大きくなりました。

私は不安になり固まってしまいました。

葉擦れの音はまるで『魔王』のように迫ります。

私は棒になりました。

 青嵐葉擦れ迫りて我棒に

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