俳句の作り方 凌霄の花の俳句

     凌霄やギリシャに母を殺めたる  矢島渚男やじまなぎさお

    のうぜんや ギリシャにははを あやめたる

     凌霄が夏の季語。

     「凌霄はノウゼンカズラ科の蔓性の落葉樹で

    7月から8月に濃いオレンジ色の漏斗状の花を咲かせる。

    花の先は5裂して開き、直径5センチから7センチ。

    茎は長く伸びて付着根をだし他の物に吸着して伸びる。

     中国原産で観賞用に植えられる。」

    (俳句歳時記 夏 角川書店編)

 

 

     凌霄やギリシャに母を殺めたる

    この句を味わうにはギリシャ悲劇を知らなければなりません。

    父アガメムノンがトロイア戦争に勝利して帰還した直後、母とその愛人に殺されます。

    殺害の動機は娘を勝利祈願のため、父がいけにえに差し出したからです。

    母は父を恨んでいたのでした。

    そんな父母の間に生まれたのがエレクトラ(姉)とオレステス(弟)です。

     弟オレステスは母と愛人を殺せというアポロンの神託を聞きます。

    そして姉エレクトラの手引きによって二人を殺害します。

    しかし弟オレステスは実母を手にかけた自責の念から気が狂います。

    復讐の女神たちに責め立てられて苦しみます。

    神殿に避難したオレステスは女神アテナの提言で裁判に臨みます。

    オレステスを弁護するアポロンと復讐の女神たちの間の裁判です。

    結果は無罪。

    復習の連鎖が断ち切られます。

     凌霄やギリシャに母を殺めたる

    夫婦・親子の憎悪と恨みが物語られるギリシャ悲劇。

 

 

     作者は凌霄まっさかりの頃、ギリシャを旅しました。

    ノウゼンカズラを見上げながら母殺しの物語に思いをはせたのです。

     凌霄やギリシャに母を殺めたる

    

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